2020年 グラミーノミネートの傾向
グラミー賞に異変? 保守的だの、独善的だのと、常に批判を浴びてきたグラミー賞ではあるけれど、2020年1月に開催される第62回グラミー賞の候補リストを見る限り、これまでの傾向とはかなり違っている。
女性や若手アーティストのノミネートが顕著となり、よりヒット・チャートや大衆の意見に即した候補が選出されている。
最大の注目は、最多となる8部門でノミネートを獲得した黒人ラッパー/シンガーのリゾ。アルバム『Cuz I Love You』で大ブレイクを果たした彼女は、既に2枚のアルバムを発表しており、まったくの新人とは言えないが、新人賞を含む主要4部門でノミネートを獲得。それを追う形でビリー・アイリッシュとリル・ナズ・Xの2人が6部門で獲得している。
デビュー・アルバム『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』を全米首位に送り込んだビリー・アイリッシュは、リゾと同じく主要4部門であるアルバム賞、レコード賞、楽曲賞(ソングライターに贈られる)、新人賞の全部門でノミネートを獲得。17歳で主要4部門全ての候補となるのは、史上最年少記録でも。ビリーのプロデュースを手がける兄フィニアスも、プロデューサー部門などで候補に挙がっている。
同じく6部門で候補に挙がった黒人ラッパーのリル・ナズ・Xも20歳と若手だ。カントリーとラップを掛け合わせたシングル「Old Town Road」(feat.ビリー・レイ・サイラス)で19週にわたって全米チャートを制覇し、史上最長首位記録を塗り替えた。アルバム賞、レコード賞、新人賞、ラップ部門などで候補に挙がったが、残念ながらカントリー部門からは締め出され。
続く5部門が、アリアナ・グランデとH.E.R.の2人。アリアナはシングル「7 rings」とアルバム『thank u, next』で主要部門の候補に挙がったほか、ソーシャル・ハウスとコラボしたシングル「Boyfriend」でもポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門でノミネート。先のリル・ナズ・Xや、ショーン・メンデス&カミラ・カベロの「Senorita」、ポスト・マローン&スウェイ・リーの「Sunflower」(レコード賞でも候補に)、ジョナス・ブラザーズの「Sucker」といった強豪と争うことに。
R&Bシンガー/ギタリストのH.E.R.は、前年度も5部門でノミネートを受けており、R&B関連の2部門で受賞を果たしている。2年連続で5部門の候補に挙がったのは彼女だけ。しかも今回は主要3部門で王手をかけている。
ロック系ではボン・イヴェールとヴァンパイア・ウィークエンドが大健闘。それぞれロック部門に加えて、主要部門にも食い込んだ。前者はアルバム賞とレコード賞など(計3部門)、後者はアルバム賞など(計2部門)でノミネートを獲得。ダークホースとなる可能性もありそうだ。
女性アーティストのノミネーションが少ないと批判を受けたり、「女性にはもっと頑張ってもらわなければ」という会長発言で大ひんしゅくを買ってきたグラミー賞。前年度あたりから改善の兆しが見えていたが、今回はいっそう女性の躍進ぶりが目立つノミネーションとなった。それを素直に歓迎する人もいれば、忖度と見る向きもあるようだが、世相を映し出しているのは間違いない。
結果は、2020年1月26日(日本時間の27日・月曜)ロサンゼルスのステープルズ・センターにて開催の授賞式で発表される。
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